初めての相手は無愛想上司


この1ヶ月
陽子が言っていたような
将来を見据えた言葉はない

変な期待を持たないように
過ごしてきたわけですが…



「醤油取って」


『はい、』


スキンシップ以外は
熟年夫婦か、と思わせるように
自然なやり取りだ


「明日は接待がある」


『わかりました、飲みすぎないようにしてくださいね』


「わかっている。おまえこそ、気をつけて帰れよ。連絡を忘れるな」


『わかってます』


淡々と話をするが
ガッツリ心配されている
これがいつものことだから
もう慣れてしまった

もちろん、嬉しい
小山課長と一緒にいられることも
私が作るご飯やお弁当を食べてくれることも、本当に幸せだ

それでも人間は欲が出る
自分がこんなにも貪欲だとは思わなかった

けれど焦っているわけじゃない
私は怖いんだ
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