初めての相手は無愛想上司
写真はなかったが
お墓にはちゃんと名前が彫られていた
お父さんが眠っていたのは
生まれ育った小さな島
中学を卒業して、すぐに本土へ
高校へ通いながらアルバイトをしたという
苦労して社会人になったなんて
全く知らなかった
いろいろ教えてくれたのは
お寺のお師匠さんだった
父とは同級生だと聞かされた
私の知らない話を
たくさん教えてくれた
どれだけ私のことを想ってくれていたか
初めて聞かされる話に
私は涙を抑えることができなかった
そんな私の肩を抱き寄せてくれた小山課長
お師匠さんは1枚の写真を渡してくれた
それは無くなる前に
お師匠さんと一緒に
笑顔で撮った写真だ
「部屋に飾ろう」
そう言ってくれた小山課長に
笑顔で頷き、お寺を後にした