初めての相手は無愛想上司


気にしない、と見ないようにしていたが
もう無理かもしれない



今日こそ、と決めたのに
小山課長を目の前にすると
言えなくなってしまった


「どうした?」


『あ、…い、いえ』


「出張の準備をしてくる」


『…はい』



寝室へ向かう小山課長
その背中を見つめていた

言いたいことも言えないなんて
私ってダメな人間だ
モヤモヤは晴れない
そうしていたら
出張前夜
私は見たくないものを目にした



「仕事終わり次第、向かうことにした。戻りは日曜の夜になる」


金曜日の朝、キャリーケースを引っ張りながら出勤して行った
本当に出張…なんだろうか



「桜庭さん、小山くん出張だと聞いたよ。良かったら…たまには資料課で懇親会でもどうだい?」


蔵田課長のお誘いに
本当に出張なんだと、思えた
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