初めての相手は無愛想上司


私の指先に絆創膏を貼ってくれる
かすかに震える指先
多分、小山課長に気がついているだろう


『…陽子に聞いたんですか?』


以前、飲みに行った時に
そんな事を言われたことがあった



「…菅野が、小夜が元気ないって言っていた。確かに俺もそれは感じていた」


マリッジブルーなんて簡単な物じゃない
もしかしたらチャンスなのかもしれない
聞くに聞けなかった事を…



『“櫻庭沙夜”さんって誰ですか?』


そう言って名刺を出した
いつ言おう、言いたいと
いつもエプロンのポケットに忍ばせていた


名刺を出すと小山課長の目が見開いたのがわかった
それを気にせず私は話を続けた


『…ロビーでお話をしているのも見かけました。それに…』


と、言葉を続けた


『出張と行った金曜の夜、その方と歩いているところを見かけました』


そこまで言うと、一息吐いた小山課長
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