初めての相手は無愛想上司


けど、私は怯まなかった
だって、だって…


泣きそう感情をぐっと抑え
決定的なことを伝えた


『…出張って、嘘ですね。蔵田課長にも協力してもらったわけですか。私に嘘をついてまで、あの人に会わなきゃいけない理由を聞かせてください。婚約解消するにも私には聞く権利があります』


そこまで知られているとは
思ってもみなかったのだろう
驚いてはいたが
婚約解消という言葉に
顔つきが厳しくなったように見えた


「…嘘をついたのは謝る、だが婚約解消はしない。俺は小夜と結婚する」


全然理由になっていないし
あの人の話は一切触れてこない
そんなに守りたい人なんだろうか、
そう思うとイラつきが増す


『小山課長が言っている小夜は“沙夜”さんの間違いじゃないですか?』


そう言って立ち上がり
私は小山課長から逃げた
< 190 / 222 >

この作品をシェア

pagetop