初めての相手は無愛想上司


「ああ、すまないな」


「いいのよ、小山くんの頼みだもの」


イントネーションが上がる話し方
伊藤さんと被る部分
そんな彼女は私へと視線を向けた


「あなたが、桜庭小夜さん?」


私に向けられた目は
敵意に満ちた目……ではなく
ニコッと笑いながら優しい目をしている



「ああ、婚約者の小夜だ」



私、勘違いをしていたの?
不安で押しつぶされそうだった気持ちが
和らぎ始めてた




『小山課長…』


私の心の不安を察知してくれたのか
膝の上に置いてる手を握ってくれた


「沙夜さん、出来てますか?」


「ええ、昨日ようやくね」


そう言って私の真向かいに座った彼女
手に持っていた箱を私達の前に差し出し
蓋を開けた
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