初めての相手は無愛想上司
『それなら、私も見たかったです。小山課長のタキシード姿』
中途半端もなかなか見れない姿
だけど、カッコいい小山課長が見たい
「小夜、綺麗だ」
改めて言われると
恥ずかしくなる
ドキドキと、心臓の音が煩いくらいだ
ゆっくりと小山課長の顔が近づいてくる
キスされる、と思ったが
キスの行方は唇ではなく頬だ
「唇にしたいが、剥げるから我慢だ」
ちょっと残念な気持ちもあるが
これから私たちは愛を誓うわけで
お時間です、と告げられる
小山課長は先に行き
私はホテルの人に助けてもらいながら
チャペルの扉の前までたどり着いた
そういえば、チャペルの場合
新婦の入場の時って
新婦の父親と腕を組み
二人で新郎の元へ行くっていうものだ
私には父親はいない
父の写真は陽子に託した
なら私は一人で入場するのだろう