初めての相手は無愛想上司


二人が何か話しているが全く聞こえない
見えるはずの空も
ぼやけて何が何だかわからない
草が湿っているせいで服へと浸透して
気持ち悪く、寒い



「何をしている」



それは聞き慣れた声
二人とは違う声だ
けど、全く思い出せない



「桜庭っ」



誰?、
その瞬間、プッツリと記憶が消えた



暖かい…
あんなに寒かったのに…




目を開けると、見慣れない天井

我が家…ではない
それだけはわかる

うちのアパートは古くはないが
天井は真っ白な壁紙だ

けど、今見えるのは
真っ白ではなく、薄いグレーに見える


どこなんだろう、
どうして、ここに?

身体を起こし
ぼーっとする頭で考えていたら
ガチャ、とドアが開いた


「起きたか」


その声で思い出した
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