初めての相手は無愛想上司
カウンターには
先週貸し出しをしたファイルが置かれている
『お預かりします』
私はファイルを手に取り
バーコードを読み取る
『傷などがありましたらーー』
これはお決まりの文句
けど、それを言わせない
「傷など付けん」
ぶっきら棒に言う言葉に
隣にいた伊藤さんは
ひぃっ、と悲鳴に似た息を吸う
用は済んだと、帰っていく小山課長
その後ろ姿にあっ、と思い出し
急いで後を追いかけた
『小山課長っ!』
捕まえたのは、エレベーター前
どれだけ早いんだよ
目だけ私の方を向けたが
興味がないと言わんばかりに
すぐ、エレベーターの扉へと向けられた
『あの、ありがとうございました。それで、鍵をーー』
返します、と言おうとしたら
タイミングよくエレベーターのドアが開いた