初めての相手は無愛想上司


蔵田課長の奥さんは5年前
乳がんになってしまったと聞かされた
蔵田課長に心配かけないようにと
隠していたという
忙しすぎ、家庭のことは全て奥さんに任せていた蔵田課長は
奥さんの病をキッカケに
部署移動を志願し、資料課に異動

最後のプロジェクトが
その時、下っ端だった小山課長も
チームの中にいたという話も聞いた



「小山くんを見ていると、昔の自分と重なるんだ」


寂しそうに笑う蔵田課長は
でもね、とニコッと笑いながら続けた



「仕事漬けになっていたけど、違ったみたいだね。小山くんには心に決めた人がいるみたいだから」


そう言って、私の後ろの方へ目線を送る
その視線を追うと、カウンターに腕組みをした小山課長が立っていた


その顔は若干、怒っているようにも見える
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