初めての相手は無愛想上司


チラッと横目で見る
まっすぐ前を見ている小山課長


どうしよう、と膝の上の手を握りしめる
来いと言われ、従ったが
何も考えていなかった



「飯、食いに行くか」


そんな沈黙を破ったのは小山課長
けど視線は前を向いたまま


『あ、は、はい!』


その後、何か言われるのかと期待したが
特に何も返ってこない

どこに行く、とか
何を食べる……とか


…と、言うか
私、制服だ

こんな格好で食事なんて行けるのか
いや、行けないだろうと
あのっ!と小山課長へ視線を送ると


あれ?と気がついた
ここら辺、うちの近くだ



あ、そうか
もしかしたら私と小山課長は
家が近いのかもしれない

だって、あの日
私が襲われそうになった日
助けてくれたのは小山課長

あんな暗い公園の茂み
近所の人や公園を利用している人じゃないと、きっと分からないだろう
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