初めての相手は無愛想上司


どうぞ、ていう声に
目からタオルを外した


腕を引かれながらも
ずっと泣いていた私
部屋に連れてかられて
小山課長から冷たいタオルを渡された


「目が腫れる」


そんな優しさ…いらないよ、と
思いながら受け取ってしまった

多分、あんなところで泣かれては困ると連れてこられたんだろう



「俺にはさっぱり、わからん」


私の隣に腰を下ろした小山課長
ため息まじりに発せられた声は
怒っているようにも聞こえる


どうしていいかわからず
濡れたタオルを握ったまま下を向く


しばし沈黙が続いた後
あ、という声が聞こえた


「あいつ、秘書課の奴なんだ」


いきなり話し始めた小山課長
あいつ…というのは
多分、あの会議室で抱き合っていた彼女のことだろう
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