ひとりかくれんぼ~ここから始まった悪夢


「お待たせ。行くか。」

「うん。」

「なんか、元気ない?」


ドクン。

心臓が不快な音を立てた。


「大丈夫だよ。」


「そっか。」

うん。大丈夫。


別に、あの子と樹が付き合ってるわけじゃない。


大丈夫、なはずなのに。

なんで、こんなに悲しいのかな。


「いつぶり、だろうな。」

「え?」

「燈那乃と帰るの、久しぶりだな、と思って。」

「確かに、そうだね。中学生ぶり、かな?」


「だな。」


「樹の弟、透(とおる)くん。元気?」


「元気元気。いつも運動してる。」


「あ、陸上部だもんね。足速そう。」


「速いよ。トオルは。」


「樹負けるんじゃない?」

「負けねーよ。俺だって速いし。」

「そっか。」

その時、「ピロン」と機械音があたしのカバンから鳴った。


「あ。グループからだ。」



< 9 / 24 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop