ひとりかくれんぼ~ここから始まった悪夢
「お待たせ。行くか。」
「うん。」
「なんか、元気ない?」
ドクン。
心臓が不快な音を立てた。
「大丈夫だよ。」
「そっか。」
うん。大丈夫。
別に、あの子と樹が付き合ってるわけじゃない。
大丈夫、なはずなのに。
なんで、こんなに悲しいのかな。
「いつぶり、だろうな。」
「え?」
「燈那乃と帰るの、久しぶりだな、と思って。」
「確かに、そうだね。中学生ぶり、かな?」
「だな。」
「樹の弟、透(とおる)くん。元気?」
「元気元気。いつも運動してる。」
「あ、陸上部だもんね。足速そう。」
「速いよ。トオルは。」
「樹負けるんじゃない?」
「負けねーよ。俺だって速いし。」
「そっか。」
その時、「ピロン」と機械音があたしのカバンから鳴った。
「あ。グループからだ。」