憑代の柩
「ま、どう考えても、後つけてるところから、知れてますよね」

 それでも放置していたのは、この男が無害そうだからか。

 それとも―― と周囲に視線を走らせている間に、流行は白旗を上げた。

「わかりました。
 話します。

 だから、貴女も話してください。

 僕の相方は、誰かに頼まれ、御剣衛の婚約者、佐野あづさについて調べていたようです。 

 『佐野あづさ』は大学教授の娘だったんですが。 別荘の火事で、夫妻は亡くなり、一人娘のあづさだけが助かりました。

 その火事からしばらくして、あづさは顔を変えているようなんです」

「整形、或いは、別人が佐野あづさになりすましていたってことですか?」

「あづさは親戚との付き合いも絶っていたようなので、詳しいことはよく」

 整形だとしたら、妙な符合だな、と思っていた。

 整形していたあづさに、私は整形されたのか。

 だとしたら、この顔の元の顔の主は、一体、誰なのだろう――
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