憑代の柩
 そのつむじを見ながら、この人も髪、やわらかそうだなと思う。

 だけど、衛のように、つつきたくはならなかった。

「大丈夫ですよ」
と流行に向かって言った。

「貴方はきっと死なないです。

 こう、天性の勘みたいなのがありそうだから。

 ヤバいものに近づくとわかるみたいな」
と言うと、彼は組んだ指の間から、上目遣いにこちらを見て言う。

「……責められているように聞こえます」

「どうして?」

「僕はあいつが、何か危険なものに手を出しているのを感じていた。

 それなのに、止めもせず、手も貸さなかった。

 相手が手伝ってくれというまで、手を出さないルールではあったけど。

 それでも、そんな決まり事、破ってでも、手を貸していたら」

「一緒に殺されていたと思いますよ」
と一蹴すると、

「……そうですかね」
と情けなげな声で言う。
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