憑代の柩
 まあ、留まりたいわけでもないが、花屋はもう雇ってはくれまいな、と伝票を取ると、流行は、あ、僕が、と言う。

「いいです。
 御剣から、ぼちぼちお金貰ってますから。

 まあ、この命を危険に晒して、顔まで変えて協力してるわけですから、そのくらいは―


 流行はこちら見、何事か考えているようだった。

「待ってください。これを」
とA4サイズの大きな茶封筒を渡される。

 それを見下ろし、

「……持ってても死なないですか?」
と言うと、

「無能な僕が調べた程度のことしか書いてないですから」
と笑ってみせる。

 先に外に出ると、背後に視線を走らせてみる。

 噂の御剣のボディガードというのは何処に居るのか。

 その気配さえ、感じさせない。

 まあ、プロなら当たり前か、と思ったあとで、

 ……流行さん、頑張って、と思った。


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