憑代の柩
 私はチャイムが鳴る前に開けていた。

 少し寒そうにして立つ衛は、いきなり開いたことに驚いた顔をしたが、すぐに、威嚇するように怒鳴ってきた。

「だから、いきなり開けるな!」


「もったいぶらなくても、どうせ、貴方、鍵持ってるじゃないですか」
と言うと、

「僕以外の奴が来たときのことを言ってるんだ」
と言う。

「はいはい。

 ご心配どうもありがとうございます。

 ちゃんと確認して開けましたって。

 足音でですけど」

「足音?」

「靴の感じからして、女ではなく、男にしては体重が軽そうで、ちょっと急いてる感じの足音」
と言うと、

「お前は探偵か」
と言われた。

 その言葉に、あの探偵らしくない探偵を思い出し、笑ってしまう。

 どうぞ、と少し身を引き、中を示すと、衛は上がってきながら、

「それと――

 簡単に男を中に入れるなよ」と言う。

 貴方は男じゃないんですかね? と思った。
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