憑代の柩
「この資料の内容は貴方の耳には入ってますよね?

 これ調べた人より有能な人が、同じことを調べていたようですから」

 結婚を邪魔するために親族が調べさせたのなら、このあづさに不利な内容は衛の許に届いているはずだ。

 いや、そもそも、このくらいのこと、御剣家の嫁になろうという女のことだから、最初から調べてあったに違いないのだが。

 衛は、ぱらぱらとめくった資料を突っ込むと、袋ごとこちらに投げて寄越す。

「確かに知っている。

 あの探偵は使えたが、相方は無能だな」

 その言葉に悟った。

「あづさのことを調べさせてたのは貴方だったんですか」

 消えた探偵を雇っていたのは、衛自身だったのか。

 しかし、その探偵は優秀すぎ、真実に近づき過ぎたために、消された。

 あるいは、姿を消すはめになったということか?

 相方を無能だと言ったのは、簡単に私に正体を知られ、すべてを話してしまったからだろう。

「なんだ?」
とこちらを見る。

 衛はまた腕を組み、鷹揚にこちらを見下ろして言う。

「当たり前だろう?

 自分と結婚する女のことを調べさせるのは」
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