憑代の柩
「まあ、貴方の立場なら。

 でも、普通は本人じゃなくて、親兄弟が勝手に調べるものなんじゃないですかね?」

 別に責めてはいませんよ、と言いながら、持ったままだったお茶をお盆ごと彼の前の小さなテーブルに置いた。

 テーブルは大きい方がいいなと思う。

 小さいと一人で食べる寂しい食事を思い浮かべてしまうから。

「随分、胡散臭い結果が出てますが、それでも結婚しようと思ったのは何故ですか?」

「好きだから――」
という言葉にどきりとする。

「という普通の結論には辿り着かんのか、お前は」

「どうも私、そういうことには疎くて」
と言うと、

「だろうな」
と返される。

 何がだろうなだ。

 何を根拠に。

 しかし、どうも、この結婚何かあったっぽいな、と思う。 

 窓ガラスに映る顔を見ながら言った。

「この顔、結局、誰の顔なんですか?」

 衛は無言でこちらを見る。

「もし、佐野あづさが別人ではなく、整形だった場合の話ですが」
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