憑代の柩
中に入ってみたが、やはり、何かこう、重苦しい屋敷だ。
息が詰まりそうだ、と思う。
洒脱な造りと家具で、煌びやか過ぎず、重厚過ぎず、実にいい感じなのだが、何か落ち着かない。
「気に入れば、こっちで寝泊まりしろ。
部屋はすぐに用意させる」
と言われても、
「どうですかねえ」
と腕をさするしかなかった。
「ま、あっちに居ても、夜な夜な首を絞められるので」
「まだ絞められてたのか」
物好きな、という目で衛は見る。
「いや、あの。
別に好きで絞められてるわけじゃないんですけど」
と言いかけて、その言葉を止めた。
火のついていない暖炉の前に行く。
その上にある写真を指差した。
「あれ?
たぶん、この美人です。
私の首を絞めてたの」
と言うと、衛はなんの感慨もなさそうな口調で、
「母だ」
と言う。
「……ですよね」