憑代の柩
 そっくりですもんね。

 この間、目が合ったときから、そんな気はしてました、と力なく言った。

「私の首を絞めている張本人のお住まいなわけですよね、此処」

「住んでない。
 此処には居ないから」

「どうしてです?」

 入院してるんだ、と言い、衛は上着をソファに投げた。

「そうなんですか」

 何故入院しているのかとか訊いても悪いかと思い、訊かなかった。

 だが、あのとき、衛が見舞いに来たと言ったのは、母親のことだったのかな、と思う。

「でも、此処に想いは残っていますよね」

 首を絞めているのが、衛の母なら、彼女は、自分の滞在を快く思わないだろう、と思った。

 じゃあ、やっぱり― と言葉を繋ぐ。

「お母様は、あづささんの首を絞めてるんですかね?」

「どうして?」

 いやあ、と己れで言っておいて、首を捻る。
< 119 / 383 >

この作品をシェア

pagetop