憑代の柩
 あのとき持って帰った本はやはり読んだことがあった。

 自分はこういう本を好むらしい。

 要もそれに気づいて貸してくれたのか。

 意外に気が利くのかな、と思った。

 まあ、それも、この顔だから、気を遣ってくれているだけかもしれないが。

「要先生。
 病院で私を診察してるとき、呪文めいたものをカルテの端に書いてらっしゃいましたけど、あれはなんですか?」

 要は、どうでもいいところをよく見てるな、という顔をする。

「魔除けだよ」

「魔除け?」

「余計なものが出て来ないように」

「殺した馨さんとか?」
と言うと、

「そうかもな」
と嗤っていた。


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