憑代の柩
「じゃあ、本当に、ただ、馨さんを殺した犯人を炙り出すために?」
そう言うと、衛は少し黙ったが、こちらではなく、前を見たまま言った。
「今後、何かあったときのために言っておく。
そのときだけ、思い返せ。
本当は、僕が佐野あづさと結婚しようとしたのは、犯人を炙り出すためじゃない。
すべてを知っていたからだ。
ただの、贖罪だ」
それなのに、あづさがあんなことになったから、どうしても、あづさを殺した犯人を挙げたかった、と言う。
「あづささんのこと、少しはお好きでしたか?」
衛はその問いには答えない。
「ただ、……あづささんを利用しただけなんですか?」
なんだかわからないが、胸が締めつけられた。
同じ顔をしているせいで、あづさの魂が乗り移ったのかもしれないと、ふと思った。
衛が車を止める。
「なんで、お前が泣く」
「いや―― なんででしょう。
わからないけど」
そのとき、見えた。
夕暮れの光の中、何処かのドアを少し開け、こちらを見て微笑む女。
そう言うと、衛は少し黙ったが、こちらではなく、前を見たまま言った。
「今後、何かあったときのために言っておく。
そのときだけ、思い返せ。
本当は、僕が佐野あづさと結婚しようとしたのは、犯人を炙り出すためじゃない。
すべてを知っていたからだ。
ただの、贖罪だ」
それなのに、あづさがあんなことになったから、どうしても、あづさを殺した犯人を挙げたかった、と言う。
「あづささんのこと、少しはお好きでしたか?」
衛はその問いには答えない。
「ただ、……あづささんを利用しただけなんですか?」
なんだかわからないが、胸が締めつけられた。
同じ顔をしているせいで、あづさの魂が乗り移ったのかもしれないと、ふと思った。
衛が車を止める。
「なんで、お前が泣く」
「いや―― なんででしょう。
わからないけど」
そのとき、見えた。
夕暮れの光の中、何処かのドアを少し開け、こちらを見て微笑む女。