憑代の柩
深夜、今までの比ではない勢いでクビを絞められて、目を覚ます。
自分を締め上げるその細い腕を掴みかけて、やめた。
「……いいよ。
やっていい」
と言うと、霊は走って逃げた。
ふう、と思ったとき、暗がりに立つ男の姿に気づいた。
「うわっ」
と声を上げる。
「要……先生っ。
なにしてるんですか。
さっきから居ましたか?」
と言うと、居た、という。
「私がクビを絞められてるのを――」
「黙って見てた」
なんでですか~、と言うと、
「なんで絞められてるんだろうな、と思って見てた」
と言う。
「何でも何も。
いいじゃないですか、もうっ」
「どうでもいいが、鍵、開いてたぞ」
「それはすみません」
「衛にかけて帰るように言っとけ」
「はあ」
「否定しないのか」
「いや、なんだかもう、いろいろとめんどくさくなりまして」
お茶でも淹れましょうか、と立ち上がると、いや、いい、と腕を掴む。