憑代の柩
 


 朝、チャイムが鳴る。

「あー、はいはい」

 お茶を淹れていた私は、立ち上がり、出て行こうとしたが、その手を要が引いた。

「なんですか、もう~っ」
「衛じゃないのか?」

「そうかもしれませんね」
「と言いながら、何故、行こうとするっ」

「チャイムが鳴っているからです」

「そこに山があるからみたいに言うなっ」

 だが、早朝訪ねて来たのは、某放送局の集金人だった。

「なんだ。
 やっぱり居るじゃないですかー」
といきなり文句をたれる。

「ええっ?
 なんですか?」

「この間来たら、もう居なくなるから払わないとか言ったくせにー」

 若いせいか、男はかなりフランクに話してくる。

「今、そこの前通ったら、人影が見えたから。

 あ、今、仕事中じゃないんですけどね。

 ちょっと文句くらい言っとこうかなっと。

 十八日以降はもう居ないとか、日付まで言うから、すっかり信じちゃいましたよ」
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