憑代の柩
「ところで、誰が妹だ?」

「いや、あの場合しょうがないじゃないですか」

 振り返り、洗面所を見たが、そこにいつもの霊は居ない。

「ないんですよね」

 呟いた台詞に、うん? と要は返す。

「ないんですよ。
 あのポーチ」

「ポーチ?」

「此処にですね。

 立っている女性の霊が、いつもポーチの中を漁ってるんです。

 そのポーチ、この部屋にあるんじゃないかと思ったんですけど、ないんですよ」

 何処にあるんでしょうね、と呟いた自分に、要は訊いてくる。

「それは、此処に前から住んでる霊か?」

「前の住人はそこに居ます。見えます?」
と指差し、訊いたが、要はあまり波長が合わないらしく、いや、と言った。

「この女性の霊は俯いてますけど。
 私の顔をしています」

 要が洗面所の鏡を見、こちらを見た。

「……まったく同じ顔か?」
と訊いてくる。
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