憑代の柩
「ちょっと感じが違いますね」
と苦笑する。

 そのとき、膝を抱えて座っていた霊が立ち上がり、何処かへ行った。

「え……」

 何事かと訊こうとする要の腕を掴み、黙らせる。

 彼の後について行った。

 彼は換気のために開けておいたユニットバスの扉をくぐり、中へと入る。

 バスの縁に足をかけると、そこに上がり、天井の蓋に手を伸ばした。

 そこを上げて、覗き見るような仕草をする。

 それから、元の場所戻り、また膝を抱えた。

「……なに今の」

 見えていないらしい要はますます胡散臭そうな顔をしている。

「要、先生。

 あの、此処の大家さんの電話番号知ってますか?」

「知ってたらびっくりするだろ」
と言われ、そりゃまあ、そうですねえ、と返す。
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