憑代の柩

 


「眠そうですね」

 要に送ってもらいし、大学まできたが、強い眠気に襲われていた。

 カフェで反り返るようにして椅子に背を預け、目を閉じていると、本田が声をかけてくる。

「あ~、あれからちょっと寝不足で」

 同じ授業をとっている女たちが、コソコソこちらを見ながら話していた。

 そちらをちらと見、手招きをする。

 女たちは不審げに顔を見合わせながら、やってきた。

「さっき呼んでた。
 第四教室で、和田先生が」

「え―― あ、ありがとう」

 女たちは礼を言い、去りながら、ぼそぼそ言っていた。

 事故で頭打って、急に穏やかになったとか。

 いや、私が穏やかかどうかは知らないけどな、と思っていると、本田が訊いてきた。

「それ、なんですか?」
と自分の手にあるものを指差す。

 ああ、これ、と新聞のコピーを見せた。

「あづさが住んでた部屋の住人は服毒自殺でした。

 日付は、五年前の今日です。

 大家さんにも確認しました」

「はあ」
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