憑代の柩
 あー、天気雨だ。

 女の子たちが頭の上に教科書を載せ、校舎に向かって、走って行くのが見えた。

「彼女は――

 なんであんな夕暮れ時を選んだんでしょうね」

 私は夕陽に温まっている白いテーブルに指先で触れ、言った。

「え?」

「結婚式と前撮りの時間ですよ。

 なんだか切なくなるじゃないですか」

「たぶん。
 相応しくないと思っていたからです。

 明るい光の下での結婚が」



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