憑代の柩

 


 学食の出口で、さっきの女に出会った。

 今は一人のようだった。

 軽く頭を下げて行こうとすると、彼女は、

「貴方、あづさ?」
と言ってきた。

「あづさじゃないわよね」

 そう言い切る。

「どうしてそう思うんですか?」

 私は笑った。

 そろそろ知れてもいい。

 私もあづさではなくなる頃だ。

「貴方、あのとき、私に水をかけ返した」

 ああ、あのとき、私に水をかけた人、と今更ながらに、気がついた。

「あづさなら、蛇のような眼で、こっちを見てるだけだもの」

 厭な子だった、と彼女は言う。

 胸痛く、その言葉を聞いていた。
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