憑代の柩
「ベッドまで送りますよ」

「いい。
 要がそろそろ巡回に来る」

 それはヤバイ、と振り向いた。

「あの、此処には、眉墨さんと誰が入院してますか?」

「さてな。
 何人か居るが、興味ないな。


 例の爆破事件のあとは結構運び込まれたようだが」

「結構?

 事件に関係あった人間、全部、こっちの病棟にってことですか?」

「何かあったら、御剣の不祥事にもなりかねないからな。

 『佐野あづさ』以外は、すべてただの巻き添えだろう?」
と厭味ににやりと嗤う。

 どうやら、腹の調子は治まって来たようだ。

 厭味に余裕が出てきた。

「……そうですね」

 要の動向を気にして、廊下を見ながら言う。

 奴が来たらまずいのは、威も自分も同じだ。

 自分など受付を堂々と通って来ているし。

 どさくさ紛れに続く厭味に、

「あっ、要先生っ」
と指差すと、眉墨は慌てて戸を閉めた。

 どんだけ要が怖いんだ……。


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