憑代の柩
 


 朝、目を覚ました衛は、窓から射し込む光の中に立つ彼女の顔つきが変わっているのを見た。

「衛さん、知っていましたか?

 川から上がった咲田馨が、要先生に殺されかけたあと、何をしていたか」

 なんとなく身構えてしまう。

 彼女はこちらの緊張を読み取り、吹き出した。

「いえいえ。
 たいしたことはしていないんですよ。

 ファミレスでバイトしたりね。

 つまり、ファミレスで働いていたのは、咲田馨なんですが。

 これは本当は貴方もご存知だったんじゃないですか?

 だって、貴方には、すべて話していたはずですよ。

 貴方の雇っていた探偵が」

 衛は息を呑む。

「貴方は、奏のことでその探偵を雇ったんじゃない。

 随分昔から、彼を使ってますよね」

 固まったままの衛の側に腰を下ろして、彼女は言った。

「病棟のロッカーで、花屋の店員の死体を見ました。

 私、花屋の店員じゃありません」
と。




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