憑代の柩
「記憶は徐々に戻ってきています。

 まだ全部じゃないですけど。

 それでですね。

 色々八代に習ったことも思い出していたんです。

 私を張っている人間が居るはずなのに、姿が見えないなと。

 八代はこういうとき、大抵、隣の部屋に潜伏しています。

 ちょっとチャラい感じの隣人が居ましたが、彼の長身は誤摩化せませんから。

 あちらがそうだと当たりを付けました」

「お前は……」

「佐野あづさに成り済ました奏を殺したのは、彼女自身でも、咲田馨でもない。

 貴方のご提案通り、結婚式をやりましょう。

 犯人は今、迷っています。

 恐らく、いろんな意味で。

 だから、切っ掛けとチャンスを与えてやるんです」

 そう私は言い切った。


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