憑代の柩
何が、新婚さんみたいですね、だ。
あいつの神経は何処か焼き切れている、と思いながら、前を見る。
硬い靴音。
階段を若い男が上がって来るのが見えた。
茶髪の短い髪で、片耳にイヤリングをやっている、長身の男。
「八代」
こちらをあまり見ない彼に、呼びかける。
彼は何も言わずに、ドアを開け、一瞬だけ、眼を合わせ、頷いた。
そのまま、閉まる。
「……八代の助手ね。
あの間抜けめ」
そう呟き、そのまま階段を下りていった。