憑代の柩
 先の見込みが薄そうだと思っているのだろう。

「だが、俺よりもあいつの方が余程、ちゃんとした探偵だ」

「何かあったんですか?

 先生の自信を失わせるようなことが」

 本当に何もかも見通せているわけではないのだろう。

 記憶もすべては戻っていないようだし。

 だが、その警戒心のない目に余計警戒してしまうのは、自分に疾(やま)しいところがあるからだ。

「秋川奏は人を殺していました。

 その死体を彼女は夕べまで流行さんが隠れていた押し入れに隠していたようです。

 調べてみましたが、奇麗なもんで、なんの証拠も残っていませんでした。

 素人の業とは思えませんね。

 ましてや、秋川奏は、その人となりを鑑みるに、とりこぼしをしないほど賢くもない」

 偉い言いようだな、と思った。

「何が言いたい?」

「先生が此処に潜入してるの。

 前からなんじゃないですか?

 御剣絡みの話には私をあまり介入させてくれなかったから知りませんけど」
< 285 / 383 >

この作品をシェア

pagetop