憑代の柩
「俺が死体を始末したと?」

「衛さんか奏に頼まれて。

 ああ、衛さんはないですよね。

 何も知らなかったようですから」

「あの日……

 奏が何かしたのはわかった。

 男が奏に近づいていたようだから、気をつけてはいたんだが。

 衛に報告する暇もなかった。

 奏は余程、自分の正体が衛に知れることを怖れていたんだろう」

「そうですね、たぶん。

 それで、衛さんから離れなきゃいけないことになるのを怖れてたんですよ。

 最初は姉の復讐のために近づいたんだったんでしょうに。

 皮肉なもんですよね」
と淡々と彼女は言う。

「奏は、人を殺すということが、どういうことなのかわかっていなかったのか。

 かなり動転していた。

 それで――」

「奏の許に行ったんですか?」

 あまり思い出したくない記憶だ。
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