憑代の柩
「知らないわよ、あんたの名前なんて」

 私は腰に手をやり、少し考えたあとで言った。

「じゃあ、内緒ですよ。
 私の名前を教えます。

 実は、先生しか知りません」

「先生って誰?」
と言う彼女の耳許で囁くと、彼女は離れたあとで、

「結局、あんた、何者?」
と訊いてきた。

「探偵です」
と宣誓するように手を上げ、彼女の許を離れる。
 

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