憑代の柩
 



「探偵ねえ」

 少し行ったところで、仁王立ちになっていた麻紀が胡散臭げに呟く。

「麻紀さん、明日、式には来られますか?」

「当たり前じゃないの」
と言う彼女に、

「防弾チョッキは着用された方がいいと思いますよ。

 あと、顔面にも何かかけられて」

 せっかくの奇麗な顔、火傷でもしたら、もったいないですもんね、と笑うと、

「厭よ」
と言う。

「ラベンダー色の素敵なドレスを買ったのよ。

 そんなアンパイアみたいな格好、冗談じゃないわよっ」

「お洒落は我慢と言いますが、命を賭けるのはどうでしょうね」

「あんた……死ぬ気なの?」

「なんでみんな同じこと言うんですか。

 別にそんな予定はないですが」
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