憑代の柩
 そろそろ梅雨かな、と衛の後ろ、ガラス張りの外を見た。

 薄曇りの外はどんよりとした空気で、なんとなく、今のみんなの気持ちのようだった。

 衛の指示でまた着替えることになり、ドレスを手に、カーテンの向こうに入る。

 目の前に、白いドレスを着た佐野あづさが居た。

 そっと鏡に触れてみる。

 そのまま、しばらくじっとしていた。

「どうですか?」
と外に出ると、衛は目を細め、こちらを見ていた。

「気に入りました?」
と訊くと、

「気に入りはしないが、今まで着た中では、マシなんじゃないか。

 花嫁に見えないこともない」
と言う。

 本当に一言多い奴だ。

 ガラス窓の向こう、携帯で話しながら歩いて行く忙しげなサラリーマンと目が合った。

 一瞬、私の視線を追うように衛が振り向いたが、サラリーマンは極自然に道の方を見た。

 そのまま、歩道を渡って行く。

「衛さん、これにします」

 そう言うと、彼はこちらを向いた。

 立ち上がった彼は側まで来、私を見つめる。
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