憑代の柩
 日が落ちかけ、住宅街に、そこだけが、ぽかりと不夜城のように浮いている。

 屋根の上の看板が廻るのを見ていると、

「座ったらどうだ」
と言われた。

 ゆっくりと腰を下ろしながら訊く。

「よく――

 来てらしたんですか?」

「ああ。
 此処から外を見てた」

「先生が……八代が貴方に?」

 確認するように問うと、
「かなり記憶は戻ってるんだな」
と言った。

 注文を取りに来た店員に、

「あの、ロイヤルクラウンダービーのディンブラを」
と言うと、衛が笑う。

 もうどうでもいいや、と少し思っていた。

「そういえば、流行さんが、このファミレスの近くで、佐野あづさの顔をした女を二度見たそうです」

「聞いた。
 佐野あづさじゃない。

 咲田馨の顔だがな。

 お前は流行とは面識がなかったのか?」
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