憑代の柩
 商店街が映っていた。

 そこの歩道で、いきなり子供が初めての一歩を踏み出したらしく母親が夫に、

『もう一回、もう一回歩かせてっ。

 おいでおいでっ』
と驚喜しながら、撮影している。

 そのとき、スポーティな格好をした女が側の花屋から出てきた。

 キャップを目深に被っている。 

 ちらと楽しげな父親と子供を振り返り、すぐに目を逸らしていた。

 横向きになった瞬間、帽子のひさしの下の顔が見えた。

 この顔は!

 衛がこちらを見、そして、目を伏せる。

「動画に表示されている時刻を確認したか」

「はい」

「警察はこう考えた。

 花を頼んだのは、佐野あづさ本人。

 或いは、この顔の女。

 例えば――」

 咲田馨とか、と衛は言った。
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