憑代の柩
 私はもう一度、その画像を再生して見ながら言う。

「過去の警察の見解では、咲田馨は死んでたんでしょうに。

 死んだ『佐野あづさ』が自分で花を頼んだんじゃ、話の辻褄が合わなくなるから、古い資料を引っ張り出してきて、咲田馨に罪をおっ被せようっていうんですかね?

 無理矢理、生き返らせて。

 でもまあ、この映像の女が花を頼んだからと言って、爆弾を仕込んだかどうかはわからないですよね」

「そうだな。

 彼女には花が運ばれる時刻がわかっていたというだけだ」 

 しかし、或る意味、恐ろしい世の中だな、と衛は言う。

「監視カメラはなくとも関係ないな。

 それ以上の台数のカメラが、そこ此処に控えていて、辺り構わず撮影している」

「貴方とか無駄に撮られてたり、記憶されたりしてそうですよね」

 携帯を返しながら言った。

「あのー、一応、言っときますけど。

 此処に映ってるの、私じゃないですからね」

「当たり前だろ」
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