憑代の柩
半壊したままの教会に、夕暮れの陽が射し込んでいた。
いっそ、このままの方が奇麗だな、と思いながら、崩れたコンクリートから外を見る。
かなり夜の色が濃くなった空に棚引く雲。
式場の方は直したようだが、控え室の一部と廊下はまだだった。
壊れた天井を見上げる衛の瞳は、微かに残る夕陽の色を透かしていた。
人の容姿になど興味はないと思っていたが、こうして二人で居るときの彼は好きだ。
なんでだろうな、と思いながら、瓦礫の向こうに沈み行く光を見、笑ってみせた。
「あづさが夕暮れの式を選んだのは、明るい日の光の下での結婚が自分に相応しくないと思っていたからじゃないかと本田さんは言っていました。
どうなんでしょうね。
今、こうして見ると、ただ、奇麗だな、とだけ思うんですが」
「それで?」
「はい?」
「お前は、此処に、何しに来たんだ?」
私は腰を屈め、ちらっとドレッサーや側のローボードの辺りをごそごそやり始める。
この周辺は爆弾から遠かったらしく、かなり原型を留めている。
「この辺り、警察も調べたんですよね? 結構物が残ってますけど」