憑代の柩
「警察は爆破事件だと思ってますからね。

 こういったものを細かくはチェックしなかったんでしょう」
と中にあったプラスチックの小瓶を指で挟み、示してみせる。

「化粧水のサンプルの瓶です。

 まあ、爆破事件ですし。

 爆弾の残骸は残っていたようですからね。

 全然違う場所にあったこんなものを警察はわざわざ調べてなどみなかったんでしょう。

 これが、奏があの部屋の風呂場から見つけた、前の住人が服毒自殺に使った薬の残りだと思います」

 薬、と衛は口の中で繰り返す。

「貴方はこの薬の存在を知っていましたか?」

 衛は目を伏せ、

「或いは、と思っていた。

 式が近づくにつれ、彼女の目は思い詰めていった。

 何かする気だと思った」
と言う。

「もしかして、貴方は彼女が自分を殺すと思ってたんですか?

 復讐の仕上げに」

 違いますよ、と私は寂しく笑う。

「彼女は自分が死ぬつもりだったんです」

 衛は、はっとしたように顔を上げる。
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