憑代の柩
 恐らく、本田に見せたのだろう。

 奏の幼い頃の写真と、そして、もう一枚の写真には、少し年上の少女とともに映る彼女の姿があった。

「ありがとうございます」
と振り返ると、男は消えていた。

 廊下に戻ってみると、男はちゃんとそこで膝を抱えている。

 私は少し笑い、
「ありがとうございます」
と繰り返したあとで、いつも奏が居た洗面台にその二枚の写真を立てかけ、手を合わせた。





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