憑代の柩
 



 ドレスを着ると、そこには、紛れも無い『咲田馨』が居た。

 麻紀はもう居ない。

 私は鏡に映った人影に向かって笑う。

「来たんですか」

「招待状出したろうが」
と開いた扉のところから声がした。

「そうしてると、貴方が花婿に見えなくもないですね」

「お前は最低の女だ」
と中に入ってきながら、要はもらす。

 中に入ってきた彼に言った。

「貴方が横領した五億四千万、衛が私にくれるそうですよ」

「……三千万だ」

「おや、一千万多いですね」

「慰謝料じゃないのか」

 そのとき、ノックの音がした。

「お花を届けに参りました」

 はっ、と要が構える。
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