憑代の柩
探偵
「ボディガードに気づかない探偵っていいんですかねえ」
ちょうど近くに入ってみたい喫茶店があったので、そこに落ち着いていた。
アンティーク調に整えられている店で、外から見た通りに、雰囲気がいい。
窓際を見るように、脚を組み、ひらひらと名刺を振りながら言うと、流行は、
「尾行は趣味じゃないんです」
などと言い出した。
使えない探偵だな、私なら雇わない。
「磐井さん」
「あ、流行でいいです。
なんだか名字、お堅い感じがして好きじゃないので。
……どうかしましたか?」
「ああ、いえ」
と名刺から視線を上げる。
「じゃ、流行さん。
なんで私を付けたんです?
誰が貴方を?」
「誰に雇われたわけでもありません。
僕は僕の意志で貴女をつけている。
あ、おかしな意味じゃなくて」
これ以上なく、おかしな意味に聞こえたが。