Hell・God
ラファエル・ベルク
「ラファエル様!」
ラファエル様と呼ばれた青年は、鋭い眼光で兵士を見る。
ラ「…エメリヒか。どうした」
エ「ルーカス様がお見えです!」
ラ「兄さんが?」
ラファエルは首をかしげた。
エ「ラファエル様に会いたいとのことです」
ラ「…通せ。」
ギィ、という音と共に、高身長の青年が入ってくる。
ル「やあやあラファエル、元気してた?」
ルーカスというらしい青年は、清々しい笑顔を見せた。
ラ「何しに来たんだ。」
ル「弟の成長を見に来たんだよ。軍に入ったと思えば一気に軍曹の立場だ。すごいよ、君は」
ラ「…また人を殺した。」
ラ「パルチザン…容疑者と疑われる人を殺した。」
ラ「何人も、関係ない人を殺したんだ。」
ラファエルは悲しそうにそう言う。
ルーカスはそれを聞き、苦笑いした。
ル「でも、なんで軍曹の君が殺したんだ?そういうのってもっと低い地位の人が…」
ラ「…踏み絵だよ。人を殺せないやつは軍にはいらない。だから、俺が人を殺せるか試したんだ。」
ラ「本当は殺したくない。なんの罪もない人を殺すなんて…悪魔じゃないか。」
ル「君は…悪魔じゃないよ」
ラ「殺される側から見れば悪魔だ。」
ルーカスは穏やかな笑顔を見せ――
ル「君は、神に選ばれし者だ。」
――静かに、そう言った。