My little stories
君の幸福論
夕焼けに染まる町、はしゃぐ子供の声。

どこからともなく漂ってくる夕飯の匂い、幸せな笑い声。

そんなありふれた小さな世界。

君はそれにふわりと溶け込むように、そしてどこか溶けきれないまま歩き出した。

君の今にも消えてしまいそうな背中を見ている事に耐えられず、冷たいその手を少々乱暴に掴んで足早に歩き出した。

横目で見ると、君は安心したような顔をしていた。

夕焼けの中、君が一瞬不自然に笑った様な気がして。

けれども僕は気のせいだと流し、また2人肩を寄せあった。

町は、簡単で小さくて、けれども満ち足りた幸福に包まれていた。

帰る親子で賑わう夕の道を、僕等はふたりぼっちで歩いていた。
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