俺様上司と身代わり恋愛!?


まぁ……でも。
私生活がどうだろうと、女をとっかえひっかえしていようと、仕事には関係ない事ではある。
気にする必要はないのかもしれない。

そう割り切り、もう今日の事は忘れてしまおう。夢だ全部夢。と頭をふるふると振っていると、今度は桐崎課長が聞く。

「で、おまえは? 友達の代理でこんな場にのこのこ出てくるほど男に飢えてんのか?」

失礼な物言いをする課長に、まさかと首を振る。

なんだか……さっきまでの話を聞いていたからか、課長の聞いてくる事が下世話に思えて仕方ない。
飢えてる、なんて言い方は引っかかってしまう。

「替え玉なんて好きでしてるわけじゃありません。ただ、美絵にどうしてもって頼まれたから来ただけで。グロスももらっちゃったし。
ああ……でも」

もしかしたらだけど。
「世間でいう〝いい男〟には飢えてるのかなぁ」とぽつりと漏らすと、それに課長が眉を寄せる。

「いい男?」
「いい男というか、きちんとした男というか」

実は最近まで彼氏がいた。しかも社内恋愛。つまり相手は課長とも同じ会社だ。

告白されて付き合い始めた関係ではあったけれど、相手の人は典型的な、釣った魚に餌をやらないタイプだったようで。
かなり適当な扱いを受けているとは思いながらもそのまま関係を続けていたら、突然の音信不通。

別れるなら別れるできちんと……と思って電話もかけたのに、出られないのかそれとも意図的になのか、十回以上かけた電話は一度も繋がらなかった。

倒れてたりしたらどうしようと心配になって調べたら、出社はしていたから、私だけを避けているんだろうとわかり、悲しさがじわじわと広がった。

同じ社内にいるのにも関わらず、数ヶ月連絡が取れないなんて、相当なめられている証拠だ。

正直、一緒にいる時間の中で、相手に他の誰かがいるんだろうなぁって事はぼんやり気づいていた。
だからそっちにいったんだろうと思って、電話を諦めメールで別れを告げたのが一ヶ月前。

メールの返事は、電話同様にない。


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